前回は「仏教」という言葉の意味するところについてお話ししました。今回は「仏教にはどんな特徴があるのか」をお話しします。
「仏教という教えは、ほかの宗教(の教え)とは何が違っているのか」、「たくさんある仏教の教え(宗派)の中で、共通しているものは何か」についてお話ししたいと思います。
仏教とは「三宝」である
「仏・法・僧の三宝」という仏教の構成要素があります。歴史で習った記憶があると思いますが、聖徳太子が作られた十七条憲法の中に「篤く三宝を敬え」という一説があったかと思いますが、まさにその「三宝」の内容です。
「仏」
一つ目の「仏」とは、仏教という教えを最初に説かれた『お釈迦様』です。古いインドのことばでブッダ(目覚めた者という意味)の音を感じに置きなおした「仏陀」の最初の一文字です。「仏」はお釈迦様(注1)だけではないですね。阿弥陀仏や薬師仏、毘盧遮那仏(大日如来)など、たくさんの仏さまがいらっしゃいます。私たちを見守り、私たちに働きかけてくださっている存在です。(注2)
「法」
二つ目の「法」とは、真実の教え、真理という意味で、「仏」が説かれた教えの内容を示しています。インドの古い言葉では「ダンマ」と言います。具体的には広い意味のお経に書かれている内容だと思ってください。三蔵法師って西遊記に出てきますね。正確には「玄奘三蔵」と呼ばれた中国等の時代のお坊さんのことですが、この「三蔵」というのがお経全般に詳しい高い徳を持ったお坊さんに対する尊称です。「経」(狭い意味でのお経)「律」(出家者などが守るべき戒律)「論」(お経や戒律に対する注釈)の3つに詳しいという意味です。三つの真理が収まった蔵に等しい知識をお持ちの高僧という意味ですね。なので、「三蔵法師」と呼ばれる高僧は、玄奘さんだけではなくたくさんいらっしゃるんです。
ちなみに、お釈迦さまはお経(経典、聖典)をお書きになってはいません。お釈迦さまの時代にもちろん文字はあったのですが、教えを文字に残そうとはお考えになっていなかったようです。
お釈迦さまはその時代の一人一人を救おうとその方々一人一人にその方の苦しみに対応した個別具体的なアドバイスをお話しされました。その方が理解できるように、いわゆる標準語(注3)ではなく、その「地方の方言」でお話になったと伝えられています。しかもひとり一人の苦しみの内容に対応した対処の仕方を、お医者さんが薬を処方するよう(「応病与薬」)に一人一人アドバイス内容を変えてお話になりました。
このような言葉をすぐそばでお聞きになっていた「アーナンダ」と呼ばれるお弟子さんが、お釈迦さまのお亡くなりになった後、他の弟子の方々の前で口頭で確認しあわれた内容が紀元前後に文字にされた「経典」の始まりと言われています。一人一人異なるアドバイス内容が伝えられているので、教え(お経)の数たるや、八万四千あるとも言われています。ちょっと大げさですかね。
「僧」
三つめは「僧」ですが、皆さんが考えている「お坊さん」のことではありません。古いインドのことばで「サンガ」が「僧伽(そうぎゃ)」と漢字化され、一文字目だけが残ったものです。意味は出家者により形成される集団のことです。
仏教とは、この「仏」「法」「僧」の三つの要素で構成されるものです。この三つを敬い、大切にし、信仰実践する方々が、仏教徒と呼ばれているということです。
今回は「仏教とは何か」に対する答え「三宝」について説明してきました。次回は「仏教の特徴」である三法印(四法印)について説明します。
(注1)
私たちが普段「お釈迦さま」と呼んでいるのは、2500年くらい前にインドで、悟りを開かれ、人々を救おうと教え導かれた歴史上の実在の人物で、「ゴータマ・シッダールタ」とも呼ばれている方のことです。ネパールとインドの国境当たりに在ったシャーキャ(釈迦)族の王国の王子様として生まれ、29歳の時に出家され35歳で悟りを開かれ、80歳でお亡くなりになりました。仏教の研究者の著作の中では「ゴータマ・ブッダ」と呼ばれることもあります。また「釈迦牟尼世尊(釈尊)」と呼ばれてもいます。「牟尼(ムニ)」は古代インドのことばで「聖者・賢者・勝者」という意味です。「世尊」も古代インド語「バガバット」(尊敬すべき人、神聖な人)の意味を漢字化した言葉です。
(注2)
仏教の世界観は壮大なものです。昔のインドで考えられた十方世界(東西南北の四方、南東・北東・南西・北西を加えて八方、上下を加えて十方)に、無数の仏国土(仏がいらっしゃる世界)が存在するというものです。仏教では、一つの世界に一人の仏がいらっしゃると考えていましたので、無数の世界(同時に存在するパラレルワールド)に、無数の仏陀がいらっしゃると考えます。